高額介護サービス費とは?
NEWS
知っておきたい払い戻し制度や申請方法
LIFULLさんより参照、シェアさせていただきます。
公的介護保険で要介護認定を受けると、介護保険サービスを受けることができます。自己負担額は1〜3割に抑えられていますが、毎月の支払いは家計の大きな負担になります。そこで強い味方となってくれるのが「高額介護サービス費」。毎月の限度額を超えた金額を、払い戻してくれる嬉しい仕組みです。
この制度の概要や申請方法、注意事項などについて解説。
〈ポイント〉
◆公的介護保険サービスの1ヶ月の自己負担額が上限を超えると、超えた分が支給される。
◆1ヶ月の上限額は前年の所得などによって決まる。
◆支給を受けるには申請が必要。公的介護サービスの利用から2年以内に申請
高額介護サービス費とは
制度の概要:公的介護保険サービスの自己負担額は所得に応じて1〜3割。
例えば1割負担の方が1万円で訪問介護を利用した場合、自己負担額は1,000円で済みます。それでも日常的に介護保険サービスを利用していると、金額が膨れ上がってきます。
1ヶ月の自己負担額の合計が高額になったとき適用されるのが「高額介護サービス費」です。個人の所得や世帯の所得によって決まる月々の負担額上限を超えた金額が、介護保険から支給されます。
申請について
申請方法:高額介護サービス費の支給を受けるには、お住まいの自治体に申請する必要があります。サービス利用料の自己負担額が上限額を上回った場合、自治体から支給申請書が自動的に送られてきます。一度申請を行えば、その後の該当した月分については、申請がなくても初回申請した口座に自動的に振り込まれます。
このように少ない手間で利用できる制度ですが、制度の存在を知っているかどうかで、介護保険サービス利用の判断が変わってきます。しっかりと頭に入れておきたい仕組みです。
申請時に必要なもの:申請書に必要事項を記入し、捺印のうえ、役所などへ郵送または持参してください。申請が受理されると「支給決定通知書」が届き、申請時に指定した口座へ振り込みが行われます。
- 高額介護サービス費支給申請書
- 介護保険被保険者証
- 印鑑
- 振込先の確認ができるもの(本人名義)
注意!自治体ごとの申請方法の違い:自治体によってマイナンバーの提示を求められたり、印鑑が不要だったり、申請手続きの詳細は異なります。詳しくはお住まいの自治体へお問い合わせください。
利用者負担上限額:高額介護サービス費制度では、所得によって1ヶ月の自己負担額の上限が設定されています。2021年8月に制度が改定され、高所得者の限度額が引き上げられました。
非課税世帯
世帯の全員が市区町村税を課されていない場合は、自己負担の上限が月額2万4,600円となります。さらに、前年の所得と公的年金収入の合計が年間80万円以下の人は、個人としての負担上限が月額1万5,000円と定められています。
生活保護を受給している人は、月額1万5,000円が負担上限です。実際は生活保護を受けていると窓口負担は0円の場合が多いです。
介護保険サービスの1割が月額1万5,000円を超えると高額介護サービス費が発生しますが、振り替え処理が行われるだけで、生活保護受給者に直接支給されるわけではありません。
世帯全員が非課税の場合のみ、「非課税世帯」と判定されます。例えば、介護保険サービスを利用する夫婦と同じ世帯に、課税対象となる35歳の子供(息子?)がいる場合も、「課税世帯」と判定されます。
表内の(世帯)は、住民基本台帳上の世帯で複数人が使った介護保険サービスの負担額を合算できるという意味です。個人で限度額に達していない場合でも、世帯全員の自己負担額を合計して限度額を上回れば、超過分が支給されます。
課税世帯
住民税の課税対象となる人がいる世帯の場合、一般的な所得なら月額4万4,400円が自己負担の上限となります。介護保険サービスを受ける方の課税所得によっては、9万3,000円、14万100円が上限額となります。
第4段階〜第6段階の区分は、介護保険サービスを受ける方の課税所得で判定されます。例えば、同じ世帯に課税所得700万円の息子がいても、判定には影響しません。
介護保険サービスを受ける方が2人以上いる場合は、課税所得の高い方が採用され、判定されます。例えば70歳の夫の課税所得が500万円、67歳の妻の課税所得が200万円の場合、第5段階と判定され、利用者負担上限額は93,000円となります。
払い戻し金額の計算
具体的にどれだけの金額が戻ってくるのか計算してみましょう。介護保険サービス利用者が1人の場合と複数人の場合で計算方法が異なります。
介護保険サービス利用者が1人の場合
払い戻される金額は
(自己負担額)-(負担限度額) |
で、計算できます。
負担限度額:1万5,000円 (第1段階または第2段階)
自己負担額:4万円
の場合、4万円-1万5,000円=2万5,000円が払い戻されます。
介護保険サービス利用者が複数人の場合
介護保険サービスを複数人が利用している世帯の払い戻し金額は
(世帯の合計負担額)-(世帯限度額) |
で計算できます。
世帯限度額:4万4,400円 (第4段階)
夫の負担額:6万円
妻の負担額:4万円
の場合、(6万円+4万円)-4万4,400円=5万5,600円が払い戻されます。
払い戻しは利用者それぞれの個人口座に振り込まれます。
個人ごとの払い戻し金額の計算式は以下の通りです。
(世帯の払い戻し額)×(個人の負担額)÷(世帯の合計負担額) |
上記の例の場合は
夫の口座に5万5,600円×6万円÷10万円=3万3,360円
妻の口座に5万5,600円×4万円÷10万円=2万2,240円
が振り込まれます。
第2段階の利用者負担上限額について
非課税世帯の第2段階、利用者負担上限額「1万5,000円(個人)、2万4,600円(世帯)」について説明します。
介護保険サービス利用者が1人の場合は「1万5,000円(個人)」が採用されますが、複数人の場合は少し計算が複雑になります。介護保険サービスの利用状況に応じて、「1万5,000円(個人)」と「2万4,600円(世帯)」のどちらかが採用されます。
例1)
夫の負担額1万3,000円、妻の負担額1万3,000円ともに「個人」の限度額(1万5,000円)を超えていませんが、世帯の負担額合計2万6,000円が「世帯」限度額(2万4,600円)を超えているため、超過分の1,400円が還付されます。例2)夫の負担額1万8,000円、妻の負担額1,000円世帯合計は1万9,000円で「世帯」の限度額(2万4,600円)を超えていませんが、夫の負担額1万8,000円が「個人」の限度額(1万5,000円)を超えているため、超過分の3,000円が還付されます。
払い戻し金額が最大になるよう自治体が計算してくれるので、詳細まで理解していなくても大丈夫です。
払い戻し対象となる介護保険サービス
対象となる介護保険サービス:高額介護サービス費の支給対象となるのは、介護保険対象の費用で、自宅にて暮らしながら受けられる「居宅サービス」、施設に入居して受けられる「介護施設サービス」、住み慣れた地域で生活し続けることを目的とした「地域密着型サービス」を利用した際の介護保険対象の利用者負担額です。
「居宅サービス」は、買い物や身の回りのサポートをする訪問サービス、デイサービスなどの通所サービス、ショートステイなどの短期入居サービスが該当します。
注意!「介護施設サービス」は特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設などへの入居に付随したサービスです。食事や入浴、排せつの介助などのほか、看護などが含まれることもあります。
対象とならない介護サービス:介護保険が適用されていても、高額介護サービス費の支給対象にならないものがあります。
在宅で介護保険サービスを受けている場合の、手すり設置や段差解消などの住宅改修費、ポータブルトイレや入浴用品などの特定福祉用具購入費は対象外です。老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などを含むことはできません。
<対象とならない介護サービス例>
- 特定福祉用具購入や住宅改修にかかる自己負担額
- 施設における居住費(短期入居の場合は滞在費)および食費
- 理美容代などの日常生活に要する実費
- 生活援助型配食サービスにかかる自己負担額等
施設サービスの食費、居住費、日常生活費などは、もともと介護保険対象外の費用なので、高額介護サービス費の対象から外れます。
支給方法:高額介護サービス費には、「本人償還」と「受領委任払い」の2通りの支給方法があります。支払いから払い戻しまでの間の立て替え払いを避けたいなら、「受領委任払い」を検討してみてください。
通常の支給方法
サービス提供事業所に対して、利用者負担額の全額を支払い、後日、利用者負担上限額を超えた金額が支給されるのが「本人償還」です。
受領委任払い制度
「本人償還」は払い戻しを受けるまでの間、立て替え分の費用負担が高額となります。介護保険施設の協力が得られれば、「受領委任払い制度」を利用することができます。この制度を使うと、高額介護サービス費が施設に直接支払われるため、施設の窓口では自己負担上限額を支払うだけで済みます。
申請には入居する施設の同意が必要です。入居する施設が代行して提出することもできます。「受領委任払い」を利用できない施設もあるので、各施設にご確認ください。
申請期間:申請期間は支給対象となった介護保険サービスが提供された月の翌月1日から2年間となっています。期間を過ぎてしまった場合は、時効により申請を受け付けることができません。自治体から申請書が届いたら、早めに手続きを済ませましょう。
支給日:介護保険サービス利用の翌々月に申請書が送付され、申請から支給まで1〜2ヶ月かかります。つまり介護保険サービスの利用から支給まで最短でも3〜4ヶ月は見ておく必要があります。その間の資金繰りも考えておきましょう。
介護保険施設やグループホームによっては、「受領委任払い制度」が使える場合もあります。自己負担が一時的に膨れ上がるのを抑えられるので、該当する方は検討してみてください。
支給決定通知書・領収書の保管:翌年の確定申告(医療費控除)で必要になるため、支給決定通知書や介護保険サービスを利用した際の領収書は保管しておきましょう。介護保険サービスの中には医療費控除の対象になるものがあり、高額介護サービス費で支給された金額は医療費から差し引く必要があります。
書類がないと確定申告がうやむやになり、還付されずに終わるケースもあるのでご注意ください。
まとめ
家計への負担が増えることを気にして介護保険サービスの利用を控えていた方は、「高額介護サービス費」を知ることで、利用が促進されるかもしれません。「高額介護サービス費」を利用して介護を受けられれば、より快適な生活が期待できます。一度、自分の世帯の状況と照らし合わせてみてください。
この記事の制作者
監修者:田中紘太(株式会社マロー・サウンズ・カンパニー 代表取締役)
併設の介護サービスを持たない単独型居宅介護支援事業所を5軒運営。ケアマネジャー向け研修動画サイト「Diversitv」運営。居宅介護支援事業所に係る厚生労働省老人保健健康増進等事業において2019年度、2020年度、2021年度と複数委員会にて委員を務める。その他介護支援専門員の職能団体理事を歴任。研修講師としても、全国各地の自治体、職能団体から依頼を受け講演活動を行う。
この記事はこちらから↓
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/payment/kougakukaigo/